それ相応のキャリアがある人やコネがある人を除き50代になれば、転職できる業界や職種が限られ難航します。
地域のミーティングで出会った坂本さんも、50歳の誕生日を目前に控え転職を決意した一人。
50歳男性、以前の職業はデイサービスの生活相談員、現在の職業は小規模多機能型居宅介護のケアマネージャー。
ケアマネ目指して50代未経験者が転職した理由
彼は、社会福祉法人の正社員として9年間、特別養護老人ホームやデイサービスで働いてきましたが、ケアマネージャーの資格取得をきっかけに転職の決心をすることとなった。
以前の法人には理念などで共感する部分が多く、定年まで働くつもりで入社しましたが、会社の業績悪化に伴う昇給の停止や賞与の大幅削減など、経済的に不安な要素が大きくなり、このまま働いていくことが本当に自分のためになるのか疑問を抱くようになった。
もともと介護職に就いたのが40代と、かなり遅めのスタートだったため、最短の時間でキャリア形成する計画を立て、導入部のホームヘルパー2級から介護福祉士、ケアマネージャーと順調に資格を取得してきました。
ケアマネージャーになった当時の仕事はデイサービスの介護職員でしたが、資格取得を機に生活相談員に抜擢され、未知の職種に不安はあるものの、新しいチャレンジにワクワクする思いがあったことは確かです。
ところが思わぬ落とし穴があり、資格取得で新しい仕事についたにもかかわらず私の月収は下がることとなりました。
まず法人には資格手当がなく、介護福祉士になった時もケアマネージャーを取得した時も一時金はありましたが月収に関してのメリットは皆無。
そのうえ今まで介護職で月々もらっていた「処遇改善手当」が、相談職ではカットされ、努力した成果が減給と納得できない結果になってしまったのでした。
50代の未経験者は減給が引き金で退職を決意
会社にとっては未知の仕事にチャレンジさせる意味合いがあり、当時の上司もその分は残業で稼げばよいとアドバイスしてくれました。
金銭的なことだけでなく資格手当もない会社の姿勢に疑問が残り、転職を決める最大の動機。
家族もいる環境ではいきなり退職を告げることもできず、デイサービスでの仕事を継続しながら転職活動が始まりました。
手段としては、ネットで「ケア人材バンク」「ケア転職ナビ」「e介護転職」の転職支援サイトに登録し、コンサルタントに相談しながら転職可能な条件を絞っていきました。
当初は特別養護老人ホームやグループホーム、介護職と兼務が多い施設系のケアマネになるつもりはなく、居宅の利用者を支援する事業所を探していました。
ケアマネ初心者であることを考えると、やはり介護職経験も考慮される施設系の方が求人が多く、最終的には法人そのものの待遇なども重視して小規模多機能型居宅介護、施設系と居宅系の中間に位置する現在の職場に落ち着きました。
50代未経験者向けのケアマネ求人があるのか心配
50代の転職では本当に求人があるのかどうか、半信半疑でのスタート。
介護の世界はほかの業種に比べて、慢性的に人手不足なのわかっていました。
ケアマネージャーの未知の職種で自分が何ができるのかもわからず、スキルでアピールできないことに不安を感じていました。
また、妻と大学生の息子を扶養している立場から、最低限保証されている現在の収入を確保するべきではないか、不安定な状況にわざわざ飛び込むこともないのではないかと自問自答を繰り返しました。
最終的には家族の反対もなく、むしろ積極的にやってみればと応援してもらったので、不安を乗り越えることができました。
もし、反対の声が少しでもあれば、転職そのものをやめてしまった可能性もあったかもしれません。
50代未経験者向けケアマネの求人がなく苦労した
経済的な不安もあり、職場には転職先が決まってから退職の意思を伝えることに決めていました。
これは、転職先が決まってから就業するまでに、少なくとも2か月くらいはかかることを意味し、退職してから次の職を決める場合に比べて、神経を使う場面が格段に大きかったように思います。
やめるつもりの会社で来年度の話が出た場合、当然自分もいるつもりで意見を出さなければなりません。
迷惑をかけることは分かっていても、その時点で退職を明かすことはできないので良心の呵責に戸惑いました。
また、転職先を探す場面でも、人手不足が常態化している業界だけに、より入社時期の早い人を採用する傾向にあり、2か月先の入社で納得してもらうにはそれなりのメリットを先方に示さなければなりません。
介護職としては、特別養護老人ホームやデイサービスでの経験で、ある程度のスキルをアピールできる立場にありましたが、ケアマネージャーとしてはやや立場の近い生活相談員の経験があるのみで、未経験での応募になるため、経験者が頻繁に職場を移動する市場の中で不利な状況を感じながらの活動ではあったように思います。
転職のことを相談したコンサルタントの方々に関して、皆さん一様に親身になって聞いてくださり、悪い印象はありませんでした。
けれども、各社の事情もあるのか、条件の合わないところを紹介されたり、最初に紹介されたところを断ると次が長期間なかったりと、実際に役に立ったかと言われると首をかしげざるを得ない状況。
最終的には、サイトで紹介される事業所に直接コンタクトを取るのが一番確実です。
こちらの熱意も伝われば、面接に進めるチャンスが確実に増えますよ。
転職コンサルタントは任せきりにするのではなく、転職実現の一手段と割り切るのが得策と理解しています。
ケアマネを目指した50代は転職で年収が50万円アップ
現在働いている小規模多機能型居宅介護施設では、ケアマネージャーと介護職を兼務し、毎日迷いながらもやりがいをもって仕事に従事できています。
最大のメリットはやはり収入面で、月収と賞与を合わせた年収で考えた場合、前職より50万円以上は上がっています。
資格手当などの待遇もしっかりしているため、転職の最大の動機である金銭的な部分はクリアできたと言えます。
また、転職の際に企業の理念を重視し、介護事業として違和感なく働ける場所、定年まで誇らしく思える場所を求めていました。
現在の法人はキリスト教の教えを理念の中心においているだけに、利用者だけでなく職員に対しても人間的な優しさを感じられ、クリスチャンではない私にとっても、溶け込みやすい、アットホームな場所だと感じています。
介護の業態として大まかに分けて営利企業と社会福祉法人の選択肢がありますが、今回の転職は社会福祉法人から社会福祉法人、いってみれば類似の形の法人への移動になりました。
金銭的なことを考えると、当初は営利企業を中心に転職先を考えていましたが、介護の仕事は私にとって生活の手段以上のものではないにしても、続けていく以上利用者に対して人間対人間で接することができる環境で働きたい願いがあります。
営利企業がすべてお金中心に回っているとは思いませんし、利用者のためになりながら金銭的にも成功している企業もたくさんあります。
でも、今回の転職を通じて自分が自分らしく介護の仕事を全うできる業態は社会福祉法人の方なのかなと実感。
今後は生活できるレベルの収入をキープしつつ、介護に従事する者として何ができるか模索しながら、現職を続けていきたいと考えています。
ケアマネを目指した50代に介護の転職事情を聞いた
最後に要点をまとめておきます。
- 転職の動機:会社の業績悪化に伴う昇給の停止
- 転職の手段:介護業界に特化した転職サイト
- 要した期間:約2か月
- 月収と賞与を合わせて、前職より50万円以上上がった
- 今は、自分らしく介護の仕事を全うできている
私も同じ経験があるのでよく分かりますが、今の職場で定年まで頑張り通そうと考えても、年収が下がってしまうとモチベーションを保てなくなるもの。
それがたった5,000円であってもです。
モチベーションが保てなくなったら、転職して年収を上げてみるのもいいかもしれませんが慎重に行きましょうね。
我々世代の転職には危険が一杯ですから。